2025/12/9
研究成果:赤田 真啓先生の論文が「Brain」に掲載されました!
赤田真啓 医学研究科博士課程学生、畑匡侑 同特定講師、辻川明孝 同教授らの研究グループは、COVID-19流行に伴うマスク着用・移動制限などの感染対策により、さまざまな病原体への曝露が大きく変化した状況を「自然実験(natural experiment)」と捉え、眼炎症疾患を含む多様な神経炎症性疾患の発症動態がどのように変化したかを全国規模で明らかにしました。
神経炎症性疾患の一部は、呼吸器・消化器感染などが引き金となって免疫反応が過剰に働き、神経に炎症を起こす可能性が指摘されてきました。しかし、感染症の流行状況が社会全体で変化したときに、全国規模で神経炎症性疾患の発症が実際にどう変化するのかを検証した研究は限られていました。
そこで研究グループは、ほぼ全国民をカバーする厚生労働省のナショナルデータベース(NDB)を用い、COVID-19パンデミック前後の診療データを7年以上にわたり解析しました。
解析の結果、病原体曝露の変化に伴う発症動態は疾患ごとに一様ではなく、大きく3つのパターンに整理できることが示されました。すなわち、発症が明確に減少するパターンを示す疾患群がある一方で、一時的に減少したのち増加傾向に転じるパターン、また全体として大きな変化がみられないパターンが認められました。さらに、発症が明確に減少するパターンを示した疾患群では、女性で減少幅が大きい傾向も確認され、行動面や免疫学的背景などの性差も示唆されました。
本研究の意義は、感染症と神経炎症性疾患の関わりという生物学的問いに対して、実験的介入が困難でも、全国規模の診療データベース解析を通じて実臨床に基づく示唆を与えた点にあります。病原体曝露が低下した社会状況を「自然実験」として活用することで、疾患ごとの感染関与の程度や医療アクセスの変化の影響を捉える手がかりを提示しました。
本研究成果は、2025年12月8日に、国際学術誌「Brain」にオンライン掲載されました。
Masahiro Akada, Masayuki Hata, Masahiro Miyake, Kenji Ishihara, Yuki Muraoka, Satoshi Morooka, Hiroshi Tamura, and Akitaka Tsujikawa.
"Natural experiment on neuroinflammatory disease incidence and infection links pre-and post-COVID-19."
Brain (2025) DOI: https://doi.org/10.1093/brain/awaf458
イラスト:
© 平田明子 / 赤田真啓 / 畑 匡侑