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網膜剥離や糖尿病網膜症、黄斑上膜などの病気を治療するのが硝子体手術です。硝子体手術では25ゲージや27ゲージなどの極小切開経結膜無縫合手術とワイドビューイングシステムの普及により安定した成績が得られるようになりました。当科では、硝子体手術を、いっそう安全に、効率よく行うための、手術手技、関連機器、システムの開発に力を注いでいます。
OCTの普及により黄斑手術の手術適応は拡大してきています。またより早期に診断され治療を受けられるようになったことは患者さんにとって大きなメリットをもたらしました。黄斑上膜に対する手術に際して、再発率を低下させるために内境界膜剥離を併施することが一般的です。しかし、眼の状態によっては単に剥離すればよいという時代ではなくなり理想的なデザインに切除することが求められるようになっています。より安全性を高め、変視症や大視症の治療効果を高めるための研究を行なっています。
裂孔原性網膜剥離においても、以前の適応は増殖性硝子体網膜症などの難症例や再剥離による再手術症例でした。現在では、若年者の萎縮性円孔によるもの以外はほとんど硝子体手術で治療されています。ポートへの網膜陥頓という大きな合併症の頻度も減り、初心者でも適切に指導を受ければ熟練者と同等の成績が得られるようになりました。しかし、時に網膜下液が粘稠で長期間にわたって吸収されない症例も見受けられますので、効果的に網膜下液を排出する方法を研究しています。
糖尿病網膜症などの網膜血管障害においてはステロイドや抗VEGF薬などの眼局所治療の普及により硝子体手術の役割は変化してきています。しかし、薬物治療単独では浮腫の再発が多く、繰り返し投与を余儀なくされるため患者さん側、治療側双方の負担が増加することも問題視されています。長い目でみると光凝固や硝子体手術などの外科的治療を適切に行うことが今後の網膜硝子体疾患治療で非常に重要になってくるでしょう。どのタイミングで外科的治療に踏み切るのが最も効果的かを見極めるための研究を行なっています。
3D対応の家庭用テレビの普及により、手軽に3D映像を再生できる環境が整ってきました。現在、全ての症例をハイビジョン3Dで記録し手術教育に活用しています。高感度カメラの開発と固定絞りを用いることで従来の3Dの欠点を克服し非常に臨場感のある動画を撮影することが出来るようになりました。実際の感覚では情報量は2Dの2倍どころか数倍以上あるように感じます。術後カンファレンス、手術研究会、学会セミナー、American Society of Retina Specialists、日本眼科学会主催眼科サマーキャンプでも実績があり、手術室でリアル3D画面を見ながらマイクを用いてトレーニング中の術者を指導することもできます。ヘッズアップサージェリー、将来のロボット手術、遠隔手術へも応用できるように研究しています。(鈴間 潔)