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RETINAL DEGENERATIVE DISEASES

網膜変性研究

超広角走査レーザー検眼鏡を用いた自発蛍光所見で視野や病態の研究を行っています。

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網膜変性グループでは網膜の画像解析、遺伝子診断、モデル動物を用いた治療法の研究、患者さん由来iPS細胞を用いた病態解明や治療法の研究を行っています。画像解析では10年ほど前から光干渉断層計を用いて視細胞の状態の視機能への影響を調べる研究を行っており、外顆粒層や視細胞外節の所見から視力、視野、局所網膜電図の振幅などが予測できることを示しています (Oishi A, Eye 2009 a,b,c, Makiyama Y, Retina 2014)。また、網膜変性疾患では他疾患に比べ、眼底自発蛍光所見が有用な検査となります。特に2012年から一度の撮影で周辺網膜まで観察できる超広角走査レーザー検眼鏡が導入され、残存視野などの視機能に加え罹病期間をある程度評価できるようになりました (Oishi A, Ophthalmol 2013, Oishi M, IOVS 2014)。これにより視野障害のわりに罹病期間が短いことが示唆される症例では自己免疫網膜症を考えるなど、鑑別にも役立っています。さらに眼底自発蛍光は網膜の状態を面でとらえることが出来るため、生理的な錐体、杆体の密度分布と異常所見の範囲を比較することで、杆体優位に障害される網膜色素変性で特徴的な所見があることを報告しています (Nakagawa S, Retina 2016)。補償光学走査型レーザー検眼鏡を用いて、まだ視力が保たれている状態でも既に錐体細胞が減少し始めていることなどを示してきました (Makiyama Y, PlosOne 2013)。

遺伝子診断では遺伝性網膜変性疾患の多様な原因遺伝子を網羅的に調べるため、次世代シーケンサーを用いて、329人の網膜色素変性、43人の錐体・錐体杆体ジストロフィの患者さんの解析を行い、それぞれ121人、12人の原因遺伝子を確定しました (Oishi M, IOVS 2014, Mol Vis 2016)。そのほかの方法も含め現在200人あまりの原因遺伝子を確定しており、今後も新たな原因遺伝子の発見を目指し解析を続けています。

また新たな治療法につながるよう、モデル動物を用いて炎症に関与する経路の変性過程への影響を調べたり、(Guo C, Exp Eye Res 2012)新規に合成された化合物の効果を検討しています (Hasegawa T, Sci Rep 2016) 。更に患者さんの皮膚や血液からiPS細胞を樹立し、実際の変異が細胞内でどのような変化を起こしているのかを調べる研究や、動物実験で効果があった方法が患者さん由来の細胞にも効果があるかを調べるといった研究を行っています。

外来での患者さんの診察をベースに、そこから得られた洞察を疾患の理解や新しい治療の開発につなげていければと考えて研究を行っています。(大石 明生)

次世代シーケンサーを用いて遺伝性網膜変性疾患の遺伝子診断を行っています。(Oishi, IOVS 2014より)

モデル動物を使って、薬剤による視細胞保護効果を検討しています。(Hasegawa, Sci Rep 2016より)

研究業績
  1. Sugahara M, Miyata M, Ishihara K et al. Optical Coherence Tomography Angiography to Estimate Retinal Blood Flow in Eyes with Retinitis Pigmentosa. Sci Rep. 2017;7:46396
  2. Hasegawa T, Muraoka Y, Ikeda HO et al. Neuoroprotective efficacies by KUS121, a VCP modulator, on animal models of retinal degeneration. Sci Rep. 2016;6:31184.
  3. Oishi M, Oishi A, Gotoh N, et al. Comprehensive molecular diagnosis of a large cohort of Japanese retinitis pigmentosa and Usher syndrome patients by next-generation sequencing. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2014;55(11):7369-75.
  4. Oishi M, Oishi A, Ogino K, et al. Wide-field fundus autofluorescence abnormalities and visual function in patients with cone and cone-rod dystrophies. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2014;55(6):3572-7.
  5. Oishi A, Ogino K, Makiyama Y, et al. Wide-field fundus autofluorescence imaging of retinitis pigmentosa. Ophthalmology. 2013;120(9):1827-34.