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ゲノム研究

WNT7Bが網膜に発現しており、近視に関連することを示した研究 Miyake M, et al. Nat Commun 2015

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京都大学ゲノム医学センターが主導する「ながはま0次予防コホート事業」と協力して、様々な眼の疾患に関して、その原因やメカニズムを遺伝学的側面から解明し、「病気の解明」と「医学の発展」への貢献を目指しています。その成果としてこれまでに、世界で初めて近視に関連する遺伝子を報告いたしました(Nakanishi H, et al. Plos Genet 2009)。その後も加齢黄斑変性の発症や重症度に関与する遺伝子(Akagi-Kurashige Y. Ophthalmology 2015)、偽落屑緑内障に関与する遺伝子(Aung T, Nat Genet 2015, 2017)や神経線維層厚に関与する遺伝子(Yoshikawa M. Sci Rep 2017, IOVS 2017)について研究成果を報告してきました。さらに国内外の多くの施設とも共同で研究を進めており、現在では①近視による失明の原因として非常に重要な近視性黄斑症に関連する遺伝子の探索、②脈絡膜の肥厚に関連し、さらには中心性漿液性脈絡網膜症の発症に関係する遺伝子の解明、に関しまして研究を行っております。

また近年では、一人ひとりの個性にかなった医療を行うという「個別化医療」が広まってきております。同じ病気を持った患者さんに同じ治療を行っても、治療の効き目に差があることは昔から知られており、そこには個人が持つ遺伝子の違いが深く関わっていると考えられます。我々は加齢黄斑変性に対する個別化医療の実現のために、20以上の施設と共に前向き共同研究を行っており、今後遺伝子診断を応用することにより、現在の治療方法を有効に活用した治療成績の向上が可能になると考えています。

上記の疾患ではある遺伝子が発症に寄与する、つまり変異があると疾患が発症しやすいが、必ずしも発症するとは限らないという関係にあります。一方遺伝性網膜変性疾患は、ある遺伝子に有害な変異があると、原則として疾患が発症することになります。ここで一つの遺伝子が一つの疾患に対応していれば、話は単純なのですが、例えば網膜色素変性の原因としては67、錐体杆体ジストロフィの原因としては25の遺伝子が報告されており、これらをすべて検索するのは従来の方法では困難でした。我々は個別の遺伝子検査やマイクロアレイのほか次世代シーケンサーを用いて、これを網羅的に解析することを行い、これまで200人あまりの遺伝子診断を確定しています。今後も引き続き既に分かっている遺伝子の変異を検索するとともに、疾患の原因となる新たな遺伝子の同定に向けて研究を続けていきます。(大石 明生)


加齢黄斑変性の病変面積の全ゲノム関連研究 Akagi-Kurashige Y. Ophthalmology 2015

次世代シーケンサーによる網膜色素変性の網羅的遺伝子診断 Oishi M et al. IOVS 2014
研究業績
  1. Yoshikawa M, et al. Association of SIX1/SIX6 locus polymorphisms with regional circumpapillary retinal nerve fibre layer thickness: The Nagahama study. Sci Rep. 2017;7(1):4393
  2. Yoshikawa M, et al. Association of Glaucoma-Susceptible Genes to Regional Circumpapillary Retinal Nerve Fiber Layer Thickness and Visual Field Defects. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2017;58(5):2510-2519
  3. Akagi-Kurashige Y, et al. MMP20 and ARMS2/HTRA1 Are Associated with Neovascular Lesion Size in Age-Related Macular Degeneration. Ophthalmology. 2015;122(11):2295-2302.e2.
  4. Kumagai K, et al. Central blood pressure relates more strongly to retinal arteriolar narrowing than brachial blood pressure: the Nagahama Study. J Hypertens. 2015;33(2):323-9.
  5. Miyake M, et al. Identification of myopia-associated WNT7B polymorphisms provides insights into the mechanism underlying the development of myopia. Nat Commun. 2015;6:6689.