RESERCH CONTENT
眼底写真や蛍光眼底写真など、古くより眼底イメージングは診断や病態解明、治療法の開発、治験において活用されてきました。近年は光干渉断層計や眼底自発蛍光など今まで見えなかったものがどんどん可視化されるようになり、in vivo眼底イメージングに関する研究は指数関数的に増加しています。
眼底イメージングの研究と一言でいっても、撮影装置の開発、撮影方法に関する研究、画像解析に関する研究などに分類され、よりよい研究を実施するためにはそれぞれに専門的な知識と経験が必要です。一方でそれぞれを切りわけて単独で研究することは困難です。私たちのグループではこれらすべてについて研究を行い、撮影機器にあった撮影方法や画像解析方法を模索して研究を進めています。最近私たちが精力的に行っている研究の一つに“補償光学”が挙げられます。補償光学とは天文分野で応用されている、大気の揺らぎをキャンセリングしながら星像を観察する技術で、ハワイ島のすばる望遠鏡が有名です。本来眼底は瞳孔を通して直接観察が可能な部位ですが、眼球光学系が持つ収差(ゆらぎ)によって、細かく観察することは従来不可能でした。私たちは眼底の撮像機器にこの収差をキャンセリングできる補償光学を搭載し、眼底を細胞レベルで観察する研究を行っています。本システムをもちいれば、網膜の錐体や杆体細胞、血管の“壁”、流れる血球の観察を非侵襲的に観察でき、早期診断や治療効果の判定に応用できると期待されています。イメージングは研究の道具として活用されてきましたが、多様なイメージング機器が登場し、より効果的で効率的な解析方法の提案がよりよい診断や治療効果の判定、病態の解明につながる現在においては、眼科領域においても一つの研究分野として専門的に取り組む時代になりました。今後も、私たちの発想と、行動力が眼科医療の質の向上につながると確信しています。(宇治 彰人)